生活費

「withコロナ」「afterコロナ」という単語をお聞きになったことはありますか?

新型コロナウィルスの影響で、様々な活動が制限されている状況は続き、しばらくはコロナウィルスと共存しなければならないと言われています。それが「withコロナ」の世界。
そして、新型コロナウィルスの影響がほぼほぼなくなった後の世の中が「afterコロナ」

共に様々な変革が起こると言われていますが、特にメーカー(製造業)で働く中高年にとってまったなしで襲ってくるであろう事象として、企業のリストラがあげられます。

中高年は変革を嫌う方が多いので、リストラは中高年を対象とした内容になる可能性が高いわけですが、退職金上乗せがセットとなった「希望退職制度」がで実施されたとき、どのような選択をとるべきなのか。

未来に起こりうる事象に中高年が備えるうえで最も大切な「お金」の問題について検証してみたいと思います。

中高年がリタイアする際には本当に2000万円が必要なのか

老後2000万円

世間では、貯蓄金額として2,000万円必要だとか、3,000万円必要だとか言われておりますが、皆さんにとって本当に必要でしょうか?それとも足りないでしょうか?

その根拠となっているのは、「家計調査報告(家計収支編)―平成30年平均速報結果の概況―」(総務省統計課)の高齢夫婦無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯)の家計収支データです。
これによると、夫婦二人で生活するのに必要な平均的な支出は約26万4000円となっています。

一方で収入は人によって違いますよね。
ですので、正直一般論はあまり関係ありません。

支給される予定の年金のほかに、加入している積立型年金保険や確定拠出年金などから受け取る予定の金額、株などを持っているのであればその配当金、不動産を持っているのであれば家賃収入などを足した合計金額になります。

例えば

その合計が30万円あれば毎月の収入は足りているわけですから、住宅ローンの残金や子供の教育費などの大きな支出に対しての備えだけで足ります。
一方で合計金額が22万円しかなければ、毎月4万4000円 年間52万8000円足りないので、85歳まで生活すると仮定すると、約1056万円足りないという試算になるわけです。

また、必要な金額はこれからの人生設計にも大きく影響してきます。
第二の人生を愉しみたいと考えている方もいらっしゃれば、まだまだ第一線で働きたいと考えている方もいらっしゃるでしょう。
いろいろな選択肢の中から最適解を導き出すためには、今の状況をしっかりと把握することが大切です。

それぞれのご家庭において、一般的な年金支給が始まる65歳までに、あといくら収入を得て、どの程度の貯蓄をしなければならないのかということを、しっかりと把握しておくことが、とても重要になってきます。

希望退職制度に応募しなかった場合はどのような予定だったのか

希望退職制度

中高年になってきますと、今後どのくらいの収入が得られるのかを考え、第二の人生を想定した生活設計をし終えた家庭は多いと思います。

例えば

大手メーカー勤務 50歳 課長職 年収1,000万円 エンジニア
役職定年が54歳 定年が60歳(65歳までの再雇用は難しい)
退職金が約2,000万円の方の場合

【例1:そのまま勤め続けられた場合】

金額 計算式
50~54歳まで 4,000万円 1,000万円×4年間
54~60歳まで 3,600万円 600万円×6年間
60~65歳まで 750万円 150万円×5年間
退職金 2,000万円
合計 1億 350万円

筆者は仕事柄、大手メーカーで働くエンジニアの方とお話をする機会が多いのですが、意外にも60歳で定年退職を迎えた後に再雇用される制度はあっても、実際に雇用される可能性は低いという方がたくさんいらっしゃいます。
ですので、今回例として挙げた方は、現職での再雇用は厳しく、退職してエンジニアではない仕事に就くことを前提とした試算となります。

この「1億350万円」を根拠として、住宅ローンの返済や子供の教育費の支払いなどを計画し終えているわけですから、希望退職制度に応募した場合、ここからどのくらいずれこむ可能性があるのかという視点が重要となってくるのです。

希望退職制度に応募するとこうなるケースが多い

早期退職

中高年の転職支援を行っている筆者が、過去にお会いした希望退職制度もしくは早期退職優遇制度を利用した方々の実績をもとに試算した結果はこちらになります。

年収は600万円くらいまで落ちてしまうケースが多かったので、それを軸に行いました。

【例2:早期退職制度に応募し、再就職した場合】

金額 計算式
50~60歳まで 6,000万円 600万円×10年間
60~65歳まで 2,500万円 500万円× 5年間
退職金 2,000万円
退職金の上乗せ 1,400万円 月収70万円×20か月
合計 1億1,900万円

生涯年収という考え方でいうと、現在の職場でそのまま働き続けるより退職金の上乗せ分の金額が多くなりました。

中高年にとって大切なのは何歳まで働けるかということ

働く

2つのシミュレーションを見て、何か重要なのかはすぐにわかっていただけると思います。

【例1】と【例2】では、60歳で定年を迎えてから、年金が支給される65歳までの5年間の収入が大きく違っているのです。

50歳~60歳までの総額収入は【例1】の方が1,600万円程多い。
60歳~65歳までの総額収入は【例2】の方が1,750万円程多い。

上記はほぼ同金額ですから、こうなると【例2】の方が退職金が上乗せされた金額の分、年収の総額が多くなります。

どうしてこういう結果になるのかというと、50歳前後のタイミングで65歳まで就業可能な企業に転職できる可能性はあるが、60歳のタイミングで65歳まで就業可能な企業に転職するのは難しいからです。

年収が下がっても良いので65歳まで働くことができる会社を選択するのか、それとも年収が下がることを避けて、結果転職先が見つからず、60歳までの就業となってしまうのか、非常に難しい選択になります。

【例3:再就職先が65歳まで働けない職場であった場合】

金額 計算式
50~60歳まで 6,000万円 600万円×10年間
60~65歳まで 750万円 150万円×5年間
退職金 2,000万円
退職金の上乗せ 1,400万円 月収70万円×20か月
合計 1億 150万円

とはいっても、【例1】と【例3】は、ほとんど変わりません。

退職金の上乗せ分がプラスになるわけではありませんが、当初の予定であった【例1】と同じくらいは総額収入として稼げそう、となるわけです。

希望退職制度を活用して早期に引退する、という選択肢も

ターニングポイント

中高年の幸せにとって必要なのは、お金だけではありません。
第二の人生として既にやりたいことがあり、予定より早くその計画を推進させるために、60歳で引退、もしくは60歳よりも前に引退するという選択肢もあります。
その場合、退職金の上乗せは当初の計画にはなかったボーナスになり得ますよね。
65歳で住宅ローンを完済しようと考えていた人にとって、上乗せされる金額はちょうど住宅ローンの残金分というケースもよくある話です。

【例4:早期退職制度に応募し、そのまま引退した場合】

金額 計算式
50~60歳まで 2,250万円 150万円× 15年間
退職金 2,000万円
退職金の上乗せ 1,400万円 月収70万円×20か月
合計 5,650万円

第二の人生の中で、何かしらの収入を得る活動(株などの投資でも可)を行い、年間で150万円程度は収入を得ると仮定して試算いたしました。

当初の予定であった【例1】からは、約5,000万円ほど少なくなってしまいますが、今後の生活にあまり「お金」が必要でなければ、思い切って引退をして、第二の人生を歩むのも悪くない選択肢だと思います。

早期引退する場合は、年金が減ることも考えて

年金

早期引退という選択肢を選ぶ場合、65歳から支給される年金の金額が想定より下がってしまう可能性がありますので、その試算も忘れないようにしてください。
引用URL:https://allabout.co.jp/gm/gc/478926/

例えば22歳から勤務を始めて、55歳で早期引退をしたとします。
いわゆる会社勤めのサラリーマンの場合、老齢基礎年金と老齢厚生年金の合算が支給金額です。

老齢基礎年金は40年間支払い続けた場合、満額の年78万100円(平成31年度価格)が支給されます。
55歳で引退し、60歳まで就職しなかった場合、5年間は国民年金保険料が1/2免除になりますので

78万100円×(396カ月+60カ月×3/4)÷480カ月=年額71万6717円
元々、38年間の支払いなので、満額支給の40年間の支払いは満たしていませんので、年間の減額金額は約2万4000円です。

老齢厚生年金の試算方法は非常に複雑ですので、詳細は割愛させていただきます。
55歳時の年収が600万円 月収が40万円だとした場合、減額金額は約13万円1000円です。

早期引退を実行すると、年額で15万5000円くらいの年金が減額となるということを念頭において、決断をする必要があります。

まとめ:中高年が行うリタイア時のシミュレーションは人生を豊かにする

シミュレーション

いかがでしたでしょうか。
シミュレーションをしてみると、中高年になってからの生涯年収を考えたとき、退職金が上乗せで支給されるということは、とても大きなご褒美になっていることがよくわかります。

上乗せ分を住宅ローンの返済は子供の教育費にあてることができれば、早期引退や自分で事業を立ち上げるなど、様々な選択の幅がでてきます。

リストラというと非常に暗いイメージに感じてしまいますが、家庭内で「希望退職制度で退職金が上乗せになったらどうする?」というシミュレーションはしてみると明るい気付きが生まれるかもしれません。
中高年の第二の人生に対して華やかで豊かなイメージを持つことができるきっかけにしていただけるといいですね。