中高年にリストラの危機 コロナ以降の社会を予想し対策を考えよう

世界中の経済活動を止めてしまった新型コロナウィルスですが、少しずつコロナショック後の社会について語られるようになってきました。
そこで、過去に起こった事象を参考に、中高年にリストラの危機について考えてみたいと思います。

中高年の雇用への打撃は遅れてやってくる

恐慌

思い出してみてください。

2008年9月15日、アメリカ合衆国の投資銀行であるリーマン・ブラザーズ・ホールディングスが経営破綻したことによって発生した、世界規模の経済危機「リーマンショック」。
現在50歳の筆者は当時30歳代の後半でした。転職支援の仕事をしており、自分自身がリストラという大波に飲み込まれてしまったのでよく覚えています。

まず、最初に危機が襲ったのは派遣社員に対しての「派遣切り」でした。約3か月後の2008年12月末に派遣社員の多くが契約終了となり、失業者が多数発生しました。派遣社員の救済として設営された「派遣村」という言葉を覚えている方も多いのではないかと思います。

次の大きな事象としては、新卒採用の内定取り消しです。2009年2月~3月のことでしたから約半年後のことでした。

中高年を対象としたリストラは最後にやってきます。年度が変わり、2009年4月以降にリストラを実施する企業が増加し、筆者が所属していた企業も退職勧告される人が後と絶たなくなり、筆者を含め、多くの人が会社を去りました。
その後約1年間、雇用は最悪の状況が続いたわけです。

中高年は「コロナショック」リストラに備えよう

コロナウイルス

2020年初頭に発生した新型コロナウィルスによるパンデミックの影響で、「世界恐慌に匹敵するような、未曽有の経済危機がやってくる!」と噂されています。
現時点では個人の収入が減ったといった現象は起こっていても、まだまだ世界経済全体の経済危機と言えるような現象は起こっておりません。
飲食業や観光業など、すぐに影響を受けやすい業界だけというのが、多くの人に実感地だと思います。
まだまだ対岸の火事といった状態ですね。
ですが、前述のリーマンショックの歴史から学ぶとすれば、雇用に直接影響する事象は、3か月後くらいから確実に発生するでしょう。

第一波となる「派遣切り」は3月末時点で既に発生しております。
中高年を対象とした雇用施策は、企業が半期決算を結ぶ、6月末もしくは9月末以降になるのではないかと思います。
想像以上に悪化している半期決算を受け、企業は経済危機を乗り切るために様々な施策を打ち出さなければならなくなるでしょう。

つまり

これはもちろん、飲食業や観光業の限りではありません。
多くのメーカー(製造業)も、希望退職制度を活用した人員カット(リストラ)を行うことが容易に予想できます。
数か月後に発生するであろう未曽有の経済危機に備え、特にメーカーに勤めている中高年の方は、今後何が起こりうるのかを予想し、しっかりと対策を考えておく必要があると思います。

中高年が抱く「対面神話」の崩壊はもう止まらない!

リモートワーク

在宅勤務の推奨によって、あらゆる企業活動(会議、商談、セミナー、採用面接など)が「対面」から「リモート」へ移行しています。
緊急事態宣言下において、人々は「対面」で会わなくても様々な企業活動ができること、そして「リモート」の方が経済効率が高いと思えるようなことを実体験してしまいました。
「リモート」社会に対応するために、多くの人々は自宅のインターネット環境などが劇的に整ったり、ITリテラシーが高まったりという状況下で社会が変化するのに必要なインフラが整いつつあります。
特に中高年が抱いている「対面神話」という古い価値観(内面的要因)によってなかなか進まなかった「IT化」ですが、新型コロナウィルスという外的要因が、このように人々を強制的に矯正してしまったんですね。

一度身につけたものは使いたくなるのが人情。

緊急事態宣言が終息したとしても、「Web会議」は行われるでしょうし、「Webセミナー」や「Web面接」は増えていくでしょう。

業績悪化で効率化は工場の必須課題に。さらなるAI化は必至

製造現場においてはどうでしょうか。
そもそもAI技術の向上により、製造現場のIT化、効率化の波は押し寄せていました。

例えば、株式会社ブリヂストンさんの取り組みをご紹介しましょう。

ブリヂストン独自のモノづくりICTを搭載 最新鋭タイヤ成型システム「EXAMATION」を彦根工場に初導入
引用:https://www.bridgestone.co.jp/corporate/news/2016052502.html

ブリヂストン

提供元:株式会社ブリヂストン企業サイト

2017年1月、AIを搭載した最新鋭のタイヤ成型設備「EXAMATION(エクサメーション)」が報道陣に公開されました。
タイヤの原材料であるゴムは、気温の変化で伸びたり縮んだりしてしまいますので、微妙な調整が必要です。
さらに製造する過程において回転する器具にゴムを巻き付けながら、回転数や圧力を加減しなければならないので、その調整を人の手と目で行うしかありませんでした。

いわゆる熟練工といわれる人たちが活躍していたんですね。

結果として

この製造工程にAIの技術を導入することに成功したブリヂストンさんは、生産性を2倍に押し上げ、人員を3分の1に減らすことに成功したのです。
このように、熟練した技術者が持っていた旧来の技術から、AIを中心とした新しい技術への移管は現実的に様々な場所で起こっています。

これが、新型コロナウィルス長期化の状況下で、業績悪化という大義名分のもと、効率化へと進んでいく動きはもう止まらないでしょう。

中高年を襲う「コロナの影響だから仕方がないという風潮」

コロナショックが起こる前から既に、「東芝」「富士通」「日本ハム」など誰もが知っている大手企業がリストラを実施する時代がやってきていました。
既に「終身雇用神話」は崩壊しておりましたが、日本人の心情的にはまだまだリストラに対する抵抗感が残っています。
しかし「今回の新型コロナウィルスの影響」という理由は、多くの人に「仕方がない」と思わせるのに十分な免罪符になってしまう可能性があります。
このように、あらゆる方向から「中高年に対しての希望退職制度」導入の条件が揃ってしまいました。

中高年はリストラが行われる前に準備を!!

希望退職制度

中高年を対象としたリストラを実施する際、良く用いられるのが「希望退職制度」の実施です。

ちなみに

ちなみに「希望退職制度」とは、特定の条件に当てはまる従業員に対して退職希望社の募集を告知し、退職を希望する従業員に対しては通常通りに退職する場合よりも有利な条件を適用する制度を表します。

有利な条件として、退職金を通常より上乗せする「割増退職金」が支給されるケースが多いです。
最近では、業績悪化という特別な事情がなくても、ある一定の年齢に達した場合、「早期退職優遇制度」が運用されている企業も増えてきています。
「早期退職優遇制度」が通常運用されている企業にお勤めの方は、常日頃から制度を適用した場合のシミュレーションをされているのかもしれませんね。

しかし、それ以外の人は考えたこともないのではないかと思います。
「早期退職優遇制度」が実施される時、応募する社員側にとって一番問題となるのは、発表から応募が締め切られるまでの期間が短いことです。
過去の事例をみてみると、発表から締め切りまで1か月以内(ひどいときには2週間)というケースも少なくありません。
該当者は、短期間のあいだに「希望退職制度」に応募するか否かを決めなければならないわけですが、決めるためには様々なことを検討しなければなりません。

中高年にとっての大きな問題は「お金」と「再就職」

再就職

特に「再就職」に関しての判断は困難を極めます。

何も準備をしていない状況から応募書類を作成し、Webサイトや人脈を利用して再就職先を探し、応募手続きを行い、数回の面接を経て一か月で内定を勝ち取ることはほぼ不可能だからです。

いざというときに慌てないために、今何をすべきなのか。
今こそ「備えあれば患いなし」という先人たちの言葉を思い出す必要がありそうです。